京都青年 2016年10月号


京都青年2016年10月号 記事一覧

異なる言語と文化を持つ人々と共に生きる多文化共生社会を

活動報告
ICCPJ受け入れ
熊本地震復興支援ボランティア
地球市民育成プロジェクト


異なる言語と文化を持つ人々と共に生きる多文化共生社会を

 

京都YWCA APT担当 岡 佑里子

世界観光都市ランキングで2014、2015年と2年連続で1位となった京都市では外国人観光客が増え続け、各所で外国人観光客と接することが日常となりました。多くの大学・学校を抱える京都の地域性から留学生の数も増加傾向です。また、3ヶ月以上在住する外国籍住民の数は近年、4万人前半を保ち、京都市民の35人に1人が外国籍の方と言えます。

京都YWCAでは1991年から滞日外国人支援として多言語による電話相談・支援活動を続けてきました。活動を支えるグループ、Asian People Together(APT:アプト)は毎週、月曜日(13時~16時)と木曜日(15時~18時)に相談時間を設け、日本語・英語・中国語・タイ語・フィリピン語で電話・来所相談に応じています。必要に応じて役所や学校・職場などに同行することもあります。

相談内容をまとめてみると近年の傾向として2点あげられます。

①「新日系人」を取り巻く動き
2008年、最高裁で結婚していない日本人父と外国人母から生まれた子が「生後認知」された場合も日本国籍が認められる判決がなされました。

それまでは結婚していない日本人父と外国人母から生まれた子は「胎児認知」の子には日本国籍が与えられ、「生後認知」の子には両親の結婚がなければ日本国籍が与えられなかったのです。この動きを受けて日比国際カップル間に生まれたフィリピン在住の子どもたちの来日が増加しました。この子どもたちを「新日系人」と呼んでいます。

APTではこの新日系人関連の役所同行、認知調停、国籍取得、書類翻訳、母親の職場での諸問題の対応、住環境整備などさまざまな相談に応じています。

② 通訳派遣の増加
APTは京都市保健局と提携して各区保健センターで行われるマタニティクラスや赤ちゃん訪問、各月齢の健診などの母子保健事業に通訳者を派遣しています。

派遣を開始した2011年は4件、その後2012年25件、2013年22件、2014年32件、2015年20件、2016年上半期19件と毎年、一定数の需要があります。慣れない異国で子を産み育てる外国籍ママの言語面での支えとなっています。

また、例えば日本は妊娠時に豆腐や味噌など大豆製品をしっかりと取るように指導されますが、外国の方にそのような解説をしても理解を得ることが難しい場合があります。自分はチーズや牛乳などの乳製品に慣れている、とおっしゃる外国籍ママとの文化の違いも踏まえたうえでの細やかな対応も必要となります。

外国籍の方が誇りをもって暮らせるために、そして日本社会がより多様性に富んだ豊かな社会となるために、みなさんが関心を寄せてくださることを切に願います。

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活動報告

ICCPJ受け入れ

ICCPJ(International Camp Counselor Program in Japan)とは、台湾で活躍するリーダーを台中YMCAを通じて日本で受け入れるプログラムです。2007年から続くこのプログラムでは、日本のYMCAキャンプのノウハウを身につけることはもちろん、同世代の日本人リーダーと共にキャンプ活動を通じて交流すること、また、日本の子ども達とふれあい、台湾の文化を伝えることを目的としています。
今年は全国13のYMCAに40人が派遣され、京都YMCAには3人の女性リーダーがやってきました。

彼女達は台湾の大学で学んだ日本語を駆使して、1か月間、京都YMCAのキャンプなどのプログラムに参加し、日本人リーダーのアシスタントやスタッフ見習いをしました。

このプログラムの最大の魅力は、彼女達が様々な経験を通して生きた日本語を学び、多くの出会いを得られることです。キャンプ中、彼女達は自分の考えや思いを「どう伝えたらいいのだろう」と日本語でのコミュニケーションの壁にぶつかり、それを乗り越えるために、常に学ぶ姿勢をもって自ら考え、毎日必死にもがきます。
そうした日々の中、共に活動に励む日本人リーダーという仲間に出会い、ホームステイやホームビジットで支えてくれる日本人家族と出会います。文化や習慣が異なる地で全力で挑む1か月間、彼女達は本当に大きく成長します。と同時に、日本人リーダーや子ども達、スタッフも彼女達との交流を通して、多くの学びを得られ、両者にとって大きな糧となります。

来年以降もぜひ受け入れを続けていきたいと思います。

最後に、今回の受け入れに際しご協力くださった方々、特に彼女達のホストファミリーを引き受けてくださったワイズメンのご協力に、心より感謝申し上げます。

報告 国際協力担当スタッフ 關 つぐみ

 

***ユースの声 邱 瑜文さん(さくらリーダー)***

(日本語で感想を寄せてくれました。)
img_51991ヶ月のキャンプ、あっという間に終わりました。
リーダートレーニング、アフタースクールの子ども達に台湾の紹介、台湾短期留学生のために舞鶴での1日通訳と観光、ホームビジット、ホームステイ、京都大学YMCA地塩寮の2泊体験、そしてサバエでの半月… 今思い出すと、本当にいろいろ体験しました。

この1ヶ月は、充実して楽しかったですが、それよりもっと大切で印象深いものを学びました。それはつらさから得た成長です。

自分の日本語はまだまだなので、時々みんなの会話に入れなかったし、キャンプ場でもあまり役に立たなくて、何回も涙が出るほど落ち込んでいました。でも、そのおかげで心が強くなりました。

「コンフォートゾーン(居心地のよい場所)を抜け出す時間だ」と思って、このプログラムに申し込みました。つらくても、ここで感じたすべてが、自分の成長につながるので、申し込んで本当によかったです。

忘れられない実りのある夏休みをくれて、本当にありがとうございました。

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熊本地震復興支援ボランティア

8月19日(金)から22日(月)の日程で、熊本地震復興支援ボランティア活動を行いました。この活動はYMCA熊本地震緊急支援募金を用いて行われ、京都YMCA会員や大学生、近隣YMCAを通じた応募者など13名が参加しました。

19日の夜京都駅を夜行バスで出発し、20日の朝熊本駅に到着しました。
先ず向かった先は熊本中央YMCA。本部事務局長の神保主事から、発災直後から最近に至るまでの熊本YMCAによるさまざまな被災者支援の取り組みについてお話をお伺いしました。
その後、マスコミによる報道などで度々紹介されている、御船町と益城町それぞれの避難所を訪問し、運営スタッフの案内による内部の見学と、避難所運営の実際について詳しくお話をお伺いしました。避難者の方々が実際に生活されている空間や関係者しか立ち入れない施設内部を目の当たりにし、またお話を伺うことによって、避難者の方々のご苦労と、そのご苦労をよく理解されている運営スタッフさん達の細やかな心配りを知る事が出来たのは大変貴重な経験でした。
この日の宿泊地は阿蘇YMCAボランティアセンターでした。ここは社協によるボランティアセンター閉設後も、阿蘇地域のボランティア活動拠点として運営されています。

21日は阿蘇市黒川地区で倒壊家屋の解体作業を行いました。
阿蘇市や南阿蘇村方面は、交通アクセスが不便な事や、これまで被災情報が発信されることが少なかった等の事情により、ボランティアの訪問が少なく、思うように復興が進んでいないようです。今回の現場でも発災から既に4ヶ月を過ぎているにもかかわらず、ようやく解体作業を開始するといった状況でした。
協働する他団体のボランティアが操作する重機で崩した部分から廃材を取り出し、木材・金属・瓦や石・プラスチックなどに分別する作業です。時には古い写真や手紙といった、思い出の品が出てくる事も。作業中の事故や熱中症の発生などはありませんでしたが、この日だけでは到底片付かず、翌日以降は広島YMCAからのボランティアメンバー等に引き継いでいただき、作業完了まで結局5日ほどかかったようです。
作業後は熊本駅に移動し、夜行バス乗車で22日の朝に京都駅へ帰着、解散となりました。

今回の活動を通じて、地震発生から5ヶ月以上が過ぎた今でもなお、避難所での生活を余儀なくされている方々や、被災した家屋の片付けが進められない方々が多数おられる事を改めて確認しました。

今後も京都YMCAによる継続的な支援活動が期待されます。

報告 ボランティアビューロー専門委員 人見 晃弘

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地球市民育成プロジェクト

8月29日から9月4日にかけて、静岡県御殿場市にあるYMCA東山荘において「地球市民育成プロジェクト」の夏修研修が行われました。
「地球市民育成プロジェクト」は1年間にも渡るプロジェクトであり、グローバルイシューに取り組むユースを育てることを目的としています。今回の研修は日本、韓国、中国、香港、台湾、カンボジア、東ティモールから若者が集まり非常に国際色豊かなものでした。京都YMCAからは、国際ボランティア会のメンバー2人が参加しました。

1週間にもわたる夏期研修はワークショップ、フィールドワーク、アクションプランを主軸に、ネイチャープログラムやカルチャーナイトなど様々なプログラムから構成されています。どのプログラムもとても有意義なものでしたが、中でも印象的だったのはコリアンタウンである神奈川県川崎市への訪問です。在日大韓基督教会川崎教会では牧師さんからヘイトスピーチの現状やそれによる迫害の歴史をうかがうことができ、多文化共生の難しさとその重要性を改めて実感しました。私はこのフィールドワークや「世界がもし100人の村だったら」というワークショップを経て、差別や格差をはじめとする国境を越えて生じる問題の解決には、自分とは異なる価値観を持つ人々を尊重し理解しようとすることが必要なのではないかと感じました。もちろんそれは容易なことではないですが、一緒に研修を修了した多様な背景を持つ仲間たちを見ていると、決して実現不可能ではないことを確信するに至りました。

今回の研修を糧にし、世界で活躍する地球市民になれるよう一歩ずつ進んでいきたいと思います。

報告 国際ボランティア会メンバー 村山 純平

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