おかえりなさい ~クリスマスの喜び~
日本バプテスト病院
チャプレン 浜本 京子
子供のころだったと思う。正月映画の楽しみを叔母から教えてもらった。どのような理由だったか、叔母は私を映画へ連れて行ってくれた。木枯らしの吹く寒い日だったと思う。私が初めて見た映画は、「男はつらいよ」フーテンの寅さんだった。小学2年生の私は、映画の大スクリーンに感動し、会衆と一緒になって笑ったり泣いたりする映画というものに感激した。
家に帰る時には、私は寅さんを大絶賛していた。「寅さんはいい。いい人だ。結婚するなら絶対寅さんにする!」というと、叔母は寅さんのごとく四角い顔を真剣にして、「絶対寅さんはやめときなさい。あんたが苦労する。あれは映画だからね。実際はあんなにうまくいかないの」と、帰りの電車の中でこんこんと説教された。叔母は女手ひとりで3人の子を育てていた。姪がこの映画をきっかけに将来苦労しては一生悔やまれると思ったのだろう。
私はこの寅さんの映画の中で、寅が自分の生まれ育った東京葛飾柴又の団子屋「とらや」に帰ってくる場面が好きである。家には落ち着けず旅から旅をして、ひょっこり帰ってくると、「おいちゃん」、「おばちゃん」や妹の「さくら」は、寅をいつものように「おかえり」と言って迎える。なんという包容力、なんというやさしさだろうか。もちろんそんな「とらや」の人々の優しさを一番知っているのは寅自身なのだが。
「ただいま」と「おかえり」という表現は日本語独特のものらしく、私は常々美しいと思っている。この言葉のやりとりのうちになんともいえない人間のあたたかいつながりを感じる。「ただいま」と「おかえり」のあるところには、私たちの帰るべき場所があるように思う。
クリスマスはイエス・キリストの誕生を共に祝う時である。聖書はイエスが生まれた出来事をこう記している―ところが彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである(ルカによる福音書2章6、7節)。ヨセフは自分の祖先の故郷ベツレヘムに帰ったにもかかわらず泊まるところがない。「おかえり」といってくれる人も場所もなかったのである。この夫婦はこころある主人の助けで馬小屋を借りて、幼子は生まれる。やわらかなベッドなどなく飼い葉桶の中で静かに眠るイエス。なんら特別なものはない。マリアとヨセフ、幼子イエスという家族の原風景である。
この赤ん坊をひと目見ようと、神に導かれて馬小屋には人々が集まってきたことを聖書は伝えている。野宿をしていた羊飼いたち、遠く異国から来た博士たち、村の人たち、旅人たちもいただろう。幼子を見つめるまなざしに富む者も貧しい者、身分の差はない。寒空で生まれた新しいいのちに歓喜し、いとおしんでいる。そこにはきっと天の香り、神の光があったのではないだろうか。
この小さな男の子は30年後、天という人の帰るべきふるさとを指差し旅をする。そして私たち人間を愛し十字架の上までも従順に生き抜いていた。
私たちは家族や共に暮らす人々と何百回、何千回とこの「ただいま」と「おかえり」を繰り返す。いま日本の社会の中で「ただいま」と帰る場所を―それはこころも含めて―失っている人がどんなに多いことか。「おかえり」と迎えてくる人間のつながりがどんなに希薄になっていることか。家で、職場で、病院で、町で、施設で、人と人との関係はどうだろうか。この場と関係を大切に築いているか。そこには私たちを愛す神はいるか。
クリスマスの本当の喜びは、この幼子を通して私たちが神さまのもとに帰ることにある。神はそのひとり子をお与えになるほどにこの世を愛してくださった。そのしるしが救い主キリストの誕生である。幼子イエスに招かれた人に分け隔てはなかった。私たちはみんな神のもとに招かれている。
クリスマスには神様のところに帰ろう。そして「ただいま」と言おう。たとえ私たちから言いだせなくても神は私たちに「おかえり」といってくださる。大切な子として私たちを迎えてくださる。
2000年前、暗闇に輝いたあたたかないのちの光。飼い葉桶に眠る小さなキリストが私たちをそこへ招いている。
▲このページのTopへ
「見よ、おとめが身ごもって男の子を生む。その名はインマヌエルと呼ばれる」
この名は「神はわれわれと共におられる」という意味である。
マタイによる福音書1章23節
人が人として生きていくのに大切なことは、一人の人間として認められること、つまり「尊厳」をもって生かされること。それは番号や代名詞で呼ばれるのではく一人の人間として名前で呼ばれる存在であることではないでしょうか。またあわせて、「居場所があること」が重要と考えます。その場所にいても良いという存在、家族や友人の間で生きることが赦され喜びであることが感じられる存在。この二つが最低限の条件ではないでしょうか。
この二つが認めらない存在であることが、紛争や差別、引きこもってしまうことや他者を平気で傷つけてしまう社会状況を生み出してしまっているように思えます。
さて、泊まる宿がなく途方にくれていたヨセフとマリヤ夫婦は、馬小屋でイエス様を生む事となりますが、そこは喜びにみたされ、待ち望んでいた子供として祝福されます。神様が私たちにくださった素晴らしい贈り物です。
この良きクリスマスには、私たちが生かされていることをあらためて感謝し、尊厳が認められず居場所が与えられないでいる人々のことを憶え祈りをあわせましょう。
クリスマスおめでとうございます。
総主事 神崎 清一
▲このページのTopへ
【活動報告】
国際理解プログラム
おひさまニコニコクラブ
ディレクター 大畑 佐織
毎月1回、年間を通して野外活動に出かける幼児のおひさまニコニコクラブでは、11月までの約半年間、世界の生き物や自然について触れてきました。ザリガニ釣りに出かけたときはオーストラリアにいる青いザリガニのことを紹介し、山登りに出かけたときには世界で一番高い山を紹介するなどして、各回少しの時間ではありますが子どもたちは毎月世界について触れてきました。
11月1日の国際協力プログラムでは、その特別版として、今まで触れたことのない国を中心に歌やダンス等を交えながら楽しく学びました。まだ「国」というまとまりとして捉える事ができない年代の子どもたちですが、世界旅行を疑似体験する中で世界にはいろんな国があることを知る活動を行いました。今回はゲストに、保健師であり元日本キリスト教海外医療協力会のワーカーとしてアフガニスタンで働いておられた経験のある立山恭子さんをお招きしていたので、世界旅行の中ではアフガニスタンへ立ち寄り、写真を用いながら同じ年齢の子どもたちの様子や住んでいる家、食べ物を紹介していただきました。その中で、住む家がなかったり、きれいな水が少ないことなど現地で生活する上で困難な思いをしている方々がいることも話されました。立山さんはそんな困っていることを解決するために幼児の子どもたちにもできることとして「周りの人に今日の話を伝える」というメッセージをくださいました。小さな子どもたちが直接何かすることは難しいけれど、知っていることを周りの人に伝えることで、アフガニスタンに目を向けてくれる人が増え、それが世界を救う一歩となることを教えていただきました。人に伝えることでも国際協力になること、それが幼児の子どもたちにもできる身近な国際協力なのです。
午後からは早速、知ったことを言葉にし、ビラを作って街に配りに行くことにしました。小雨の降る中でしたが子どもたちは小さな手を一生懸命のばして大きな声で街の人にアフガニスタンについて呼びかけていました。
▲このページのTopへ
毎年11月に京都YMCAのメンバー、学生、会員、ワイズメン、リーダー職員スタッフが集まり、京都市内各所に繰り出して共に行う国際協力街頭募金が今年も11月1日(日)行われました。当日は今にも降りだしそうな雲行きに国際協力専門委員会の委員も心配そうに準備を進めてきましたが、とうとうお昼過ぎからぱらぱらと小粒の雨が降り出し、小雨の中市内9箇所に向けて出発です。
募金箱にYMCAののぼり旗、チラシなどを持った子どもや学生、リーダーが次々と募金場所へ出てゆきます。各グループの募金場所には、午前中のワイズデーのプログラムを終えたワイズメンたちも集まり街頭募金の始まりです。屋根のあるところはまだしも屋根のないところもあり、カッパを着たり傘をさしながら大きな声をだして道行く人たちに今年アジア・太平洋の各地で起こった台風や地震被災者への救援の募金協力を呼びかけていました。この日、街頭募金で集まった募金は34万円余りと雨の影響もあって例年より額は少なかったものの集まった一同の熱意と市民の善意のこもったものが寄せられました。
▲このページのTopへ
グローバルアウトドアクラブ事務局
植田 千尋
第16回日本YMCA大会が10月30日~11月1日に東山荘で開催され、京都YMCAからはリーダー、常議員、ワイズメンやスタッフの総勢9名が参加しました。全国からそれぞれの期待や課題を持って集まった参加者は、「昨日 今日 明日! つなげよう YMCAの願い」のスローガンの下で、①ミッション ②ジェンダー アサーティブ・トレーニング ③YMCAピースプロジェクト―Yes!キャンペーン ④ユース(各YMCAの特徴あるプログラムの紹介、学生YMCAの紹介、YMCA地球市民育成プロジェクト報告)の中からの選択式でプログラムは行われました。
ジェンダー アサーティブトレーニングでは、自分も周りの人も大切にしながら、率直に誠実に、そして対等に気持ちや意見を伝える方法を学びました。YMCAの中ではもちろん、生活の中でも人とコミュニケーションをとって、関係をつくっていくことは欠かせません。性別や立場、価値観の違いを理解してより良い関係を作るヒントを得ることができました。また、ユースのプログラムの中では京都YMCAで行っている「病気の子どもとそのきょうだい達のキャンプ―青い空と白い雲のキャンプ」、「聴覚障がい児プログラム研究会マイ・マイ」の活動を紹介する機会を与えていただきました。キャンプの企画や進め方、留意点などの質疑応答もあり、京都YMCAでの取り組みを知ってもらう良い機会となりました。
プログラムを通し、多くの学びや気づき、思いなどを得ることができました。また、全国から集まったYMCAに集う仲間と共有することもできました。年齢や性別、普段のYMCAでの役割や所属はみんな異なり、ほとんどの参加者が初めて会う人達であったにもかかわらず、参加者同士の間にはつながりを感じられました。そしてYMCAは人と人とをつなぐところであるということ、YMCAは人と人をつなげる場所であらなければならないということを改めて感じました。この大会での経験を活かし、これからのYMCAと自分のつながりや、YMCAに集う人達のつながりについてを考え、実践してゆけるスタッフでありたいです。
▲このページのTopへ
京都YMCAでは京都YWCAとともに毎年世界YMCA/YWCA合同祈祷週のプログラムを企画し実施してきています。今年は「いま、地球市民として生きるために」というテーマに沿って、世界的な貧困及びそれによって起こされる飢餓の状況について学ぼうと言う事で、11月13日(金)日本国際飢餓対策機構の清家弘久氏を講師に迎えて「世界の飢餓人口10億人を越えた今」というテーマで本館マナホールにて講演会を持ちました。
このプログラムの毎年の楽しみのひとつは、プログラム実行委員会の委員の手による年ごとに違うジャガイモ料理(軽食)を楽しむことができることですが、今年も期待に違わぬ工夫を凝らした軽食を楽しみながらYMCA、YWCAの活動紹介がありました。
講演は、日本の食糧自給の話から始まり漫画家のやなせたかしさんがアンパンマンに込めた隣人愛や平和への思い、アフリカのウガンダの内戦のもたらす貧困と少年兵の問題など多岐にわたりながら具体的で分かりやすいお話でした。世界の貧困や飢餓また地域紛争など日本に住むわれわれが知らないところで起こっている深刻な問題にどう関わりを持つのかという問いに対して、まずは身近なできることから始めていくことが大切だと言う事を最後に述べられていました。
出席者はYMCA・YWCAに一般参加者をあわせて26名でしたが、多くの人に聞いて欲しい考えさせられる内容でした。
▲このページのTopへ
11月15日(日)、リトリートセンターにおいて第9回オータムフェスタを開催しました。
今回は、和太鼓のサークル「渦」に出演いただき、開会式は和太鼓の演奏で盛大にスタートしました。心配された天気も持ちこたえ、曇り空ではありましたが、たくさんの子どもたちの来場もあり、合計で200名を超える参加者で大いに盛り上がりました。
来場者は、13の屋台から提供される食事を楽しまれる方、地元の名産品の販売コーナーやチャリティーバザーでの買い物を楽しまれる方、リトリートセンターの自然を満喫しながらのんびりされる方など、それぞれの楽しみ方で秋の一日を過ごされたことと思います。また、催し物として行われた綱引き大会では、全部で6チームがエントリーし、子どもから大人まで白熱した試合が展開されました。毎年多くの子どもたちが参加するオータムフェスタですが、YMCAのリーダーが提供する子どもの遊びコーナーでは、輪投げや紙飛行機の飛距離コンテストなどで大いに楽しんでいただきました。
尚、先述のチャリティーバザーでは、売上合計として20,146円が集められました。これらはすべてリトリートセンターの施設改修のために使用させていただきます。
▲このページのTopへ
京都YMCAのブランチとして長岡京市にあった西YMCAで発足し、西YMCAを閉じた後は、日本キリスト教団長岡京教会に拠点を移して続けられてきた朗読ボランティアグループ「長岡こおろぎ」が今年で20周年を迎えました。それを記念して『京都YMCA長岡こおろぎ20周年感謝の集い』が11月24日(火)紅葉燃える京都御所近くのザ・パレスサイドホテルにて行われました。
当日は、教会として「長岡こおろぎ」に活動場所を提供し活動を支えている日本キリスト教団長岡京教会の韓守信牧師や京都YMCA神崎総主事などのゲストのほかに「長岡こおろぎ」のリスナー、ボランティアグループ、三条で活動している「YMCAこおろぎ」のメンバーに「長岡こおろぎ」のメンバーを合わせて60名余りが集まり和やかな雰囲気の会となりました。
参加者の挨拶の中で日頃からテープを聴いているリスナーの方々からは、「長岡こおろぎ」から送られてくるテープを楽しみにしておられることや長年こおろぎが実施している「ふれあい広場」に参加した思い出など口々に語られ、「長岡こおろぎ」の働きが20年の歩みの中で地域にとって大切な存在となってきた事を改めて思わせるものでした。
*『こおろぎ』 ボランティアビューロに属する視覚障害者のための朗読ボランティアグループ
▲このページのTopへ
核兵器廃絶に向けての秋葉広島市長の講演会が開催されました。
2020年までの世界の核兵器の廃絶を目標に、2010年のNPT再検討会議でのヒロシマ・ナガサキ議定書の採択を目指した「YES!キャンペーン」にYMCAは賛同し協力しています。京都での取り組みとして京都YMCA、京都YWCAも加わり京都の核兵器廃絶を目指す14の団体が実行委員会を組織し主催する広島市の秋葉忠利市長を招いての講演会が11月25日に烏丸四条の京都シルクホールにて行われました。
当日は京都市をはじめ平和市長会議に加盟する京都府下の市町村の首長よりのメッセージが読み上げられ、また各自治体の平和施策担当者も出席して行われました。各団体関係者及び一般市民合わせて450名の聴衆が秋葉氏の講演とその後の立命館大学国際平和ミュージアム名誉館長安斎育郎氏のミニ講演に耳を傾けていました。当日会場では京都YMCAによるYES!キャンペーンの「ヒロシマ・ナガサキ議定書を読む絵本」の販売も行われ、講演後来会者が買い求めていました。
▲このページのTopへ