「子どもの健康」―自然の中で成長しよう―
京都府立医科大学 発達科学教室研究員
京都YMCA国際福祉専門学校非常勤講師
藤原 寛
文明が発達して経済状態が良くなった先進諸国では、国民の多くが運動不足という共通した生活習慣から肥満が激増しました。継続的な運動習慣は肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病の予防に非常に効果的ですが、中年期以降では生活習慣病はすでにある程度まで進行しており、予防のための運動効果は小児期ほど期待できません。生涯にわたる健康で質の高い生活が維持できる基盤は小児期にあるといっても過言ではないのです。
しかし、少子化による遊び相手の減少、テレビゲームなど室内遊戯の普及、家事労働の減少と塾通いによる時間の制限などによる消費エネルギーの減少や手軽で食べやすい高カロリー食品により小児肥満やアレルギー疾患が急増しました。一方で、低年齢からやせ願望もみられ、無理なダイエットから骨や筋肉を作るたんぱく質やカルシウムの摂取量が減り、疲れやすく、戸外で遊ぶことも少なく、体力は益々低下しています。
現在、肥満児を対象に運動を指導していますが、運動面での挑戦や克服する努力は希薄で、実に諦めが早い。たぶん、小さい時に何度となく試みた経験があったと思うが、うまくいかないことが多く、いつの間にか努力しなくなってきたのかもしれません。しかし、表面上は苦手意識や運動嫌いといった印象が強いが、どこかに興味や羨望といったものが見え隠れしています。肥満児が運動を意識するのは、遊び時間や体育の授業を通して、周りとの比較の中で、それまで経験していないような厳しい現実を味わうことから始まります。
身体を動かすことにかけて肥満やアレルギー疾患には配慮が必要ですが、辛抱強く改善に取り組めば、効果は思春期に現れてくることも多く、好きな運動を楽しく続けることが大切です。
わが国は、自然の持つ豊かな恵みを受けていますが、自然が本来持っている美しさや人間と自然との調和の上に成り立っていた景観も急速に消滅しています。自然は子どもを育む特別な力をもっており、自然にまかせることを強調する人も多く、見守ることが大切で、あれこれ指示すべきでないという考えもあります。
しかし、子どもたちの成長に不可欠な自然の中での学びの機会が失われ、自然の遺伝子が人工的な環境に戸惑い、不適応を起こし、極度の緊張やイライラ、キレるといった心理状態を作り出しました。自然体験は、何も高度な活動を必要とせず、年齢に応じた素朴な活動を通して、感性を育む機会が提供されるのですが、自立心、協調性、相互理解、友情、意欲、可能性への挑戦、我慢、感動、楽しさなどの人間形成の芽生えや将来の良き市民としての社会性を育むには、安全な管理のもとで意図的、計画的な体験が必要なのです。
夏休みには、子どもたちが自然とふれあえる機会をもっと増やしてほしいと思います。アンバランスな食事や不規則な生活を送りがちな夏休みは、油断すると健康の悪循環が加速的に増悪していく期間です。子どもたちの健康に関連したQOL*向上ための日常の生活習慣を見直す努力と自由に遊ぶことができる十分な時間や手間を保証してやることが、子どもたちの健全な成長を願う家庭の役割ではないでしょうか。
*QOL (quality of life)…衣食住に加えて心の豊かさも含めた「生活の質」と解釈される(編集部)。
▲このページのTopへ
「癌と告知されたとき ~癌と向き合う患者とその家族へ~」
講師にNPO法人ジャパンウエルネス、プログラムディレクター大井賢一氏を迎え、ボランティアセミナー、心のシリーズ第4回として6月3日三条本館に於いて開催されました。
死亡原因の第1位、成人の2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで亡くなる。こんな恐ろしい病気、がんと告知されたら、あなたは?
がんを患い一応の治療を終えた後、多くのがん患者は、統計によるこの先5年の生存率を知ることになる。頭、咽喉、胸、胃など少しの痛みや身体の変調などに過剰に反応し、手術や放射線、抗がん剤の副作用による辛さと共に、多くの患者に再発、転移への心配、悩みが登場する。万が一再発、転移すれば死を意味するからである。といって再発、転移を防ぐ特効薬はなく、患者自身が主体的に、意欲的に予防する術もないのが現状である。
がんは肉体の病と同時に心の病でもあると言えよう。大井氏はがん患者及びその家族の精神的な悩み、苦しみをサポートするにあたり、悩みを分別し、そしてその個々の悩みを和らげるためには、自助努力と共に家族、親戚、友達、医療者の暖かい支援協力が必要であり、又共通の悩みを持つ、整備された患者同士の集いも有効である。あなた一人が悩み、苦しみを持っているのではなく、多くの患者とその家族も同じ悩み、苦しみを持っている等々。また、患者とその家族が思い当たる具体的な悩み、苦しみの緩和方法が紹介された。多くのがん患者とその家族が経験するであろう光と闇、そして死の恐怖に、がんと言う病を自分のものとして受け止め、がんと向き合って、さらにがんと共存し、生きていく勇気と希望を与える意義のあるセミナーであった。
今後、京都YMCAボランティアビューロでは、患者さんとそのご家族の悩みや、苦しみを共有し合い又、がんとうまく付き合うための情報交換の場を設けていきたいと思っています。
(報告者 中島敬泰)
▲このページのTopへ
【報告】 第2回京都YMCAインターナショナルチャリティーラン
障がいのある子ども達のための第2回京都YMCAインターナショナルチャリティーランが鴨川公園で5月21日(日)に開催されました。佛教大学吹奏楽部の開会演奏、神﨑総主事の開会挨拶のメッセージにより開会しました。
257名が歓声をうけ、力走
京都ノートルダム女子大学アミーガスのチアダンスによる応援の後、競技開始。まず1周1700メートルのコースを小学生7チーム、個人レースで健脚を競い合いました。グループランの部では家族や職場チーム、ワイズメンズクラブチームなど35チームが思い思いのコスチュームやユニホームでそれぞれのペースで走りました。一般駅伝の部では、23チームが完走しました。トレーニングを重ねているボクシングチーム、元気印の野外活動リーダーチーム・専門学校生チーム、日本語学校チーム、また走りなれていないチームまで、さまざまなチーム模様が観客の心を暖かくしてくれました。
ボランティアが運営するチャリティランに500名を超える人々がつどう
ワイズメンズクラブ、YMCA会員、野外活動リーダー、スイミングリーダー、専門学校生など150名を超える運営ボランティアによって盛大に第2回を開催することができました。
餅つき、アイスクリーム、かき氷、たこ焼き、お好み焼きなど色々なメニューを各ワイズメンズクラブが費用を負担して提供してくださいました。
ナニカラマフラスタジオの皆さんによるフラダンス演技で和やかなムードに包まれた後、表彰式では、チーム表彰、区間表彰などが大会委員長から協賛企業に提供いただいた豪華副賞とともに手渡されました。
最後にキャセイパシフィク航空から提供された香港往復航空券をはじめホテル宿泊券や食事券など豪華景品の当る抽選会が行われ、参加者の皆さんは心温まる思いと景品を手に帰路につきました。この他179の企業、団体、個人から協賛金、物品の提供をいただきました。
また全国YMCAチャリティーランのナショナルスポンサーであるシティグループからは社員の方々の参加やTシャツ売り上げ金の全額寄付も頂き、励まされる思いでした。
障がいのある子どもたちのための支援金 2,227,399円が寄せられました。
今大会で皆さまから寄せられました協賛金、参加費による支援金は、京都YMCAが実施している障がい児支援プログラムと全国のYMCAで行っている障がい児支援プログラムにいかされます。多くの皆さまの支えにより、また天候にも大変恵まれ、事故やけがもなく終了することができましたことを感謝いたします。
※詳細は報告号で特集させていただきます。