京都青年 2010年3月号


共に生きる社会を築く

NPO法人CHARM事務局長
青木理恵子

 診療の場面で通訳として同行していると日本語を充分に理解しない人の側から日本が見えます。時として、医療者は、日本語の良く分からない患者ではなく日本語が分かる通訳者と話をしようとします。通訳は、本人に話をしてくれるように促し、そこから初めて医療者と患者の話が始まります。

 病気になると誰もが不安を感じ、疑問がわいてきます。自分の病状はどうなのだろうか?治療はどのように行うのだろうか?治療にかかる費用はどれくらいなのだろうか?これから自分の生活はどうなっていくのだろうか?外国出身の人にとっては、さらに言葉が充分分らないことにより情報から切り離され、暗闇の中に置かれることになるのではないでしょうか。その時にまず必要なのは、自分が理解できる言葉で意思疎通ができることです。誰でも自分のこととして考えてみればすぐ分ることが、後回しにされがちです。

共に生きる社会を築く

 日本社会は、総人口の約1.69%が外国籍住民です(外国人登録者数2007年末)。この中には日本生まれの人も含まれていますので、言葉が分らずにひとりで暗闇に置かれる人はこれより少なくなります。100人に1人経験するかしないかのことを優先することはできないと後回しになりがちです。

 これまで少数者の要望はなかなか聞き入れられないできました。しかし、変わった部分もあります。建物の「バリアフリー」は今や誰でも知っている常識になりました。「バリアフリー」は、障害をもっていない人にとっても使いやすい、優しい環境であることが実感されるようになったからです。

 日本の医療現場では限られた医療者が多くの患者やその家族に対応しなければならない厳しい現実があるため、特別のニードを持った人に対応していくことが難しい状況も理解できます。医療機関だけではどうにもできないことも地域にある色々な市民団体や支援団体と恊働することによって解決できることも少なくありません。

 私は、大阪に拠点を置く市民団体CHARM(移住者の健康と権利の実現を支援する会)で働いています。この団体は、日本に暮らす外国籍のHIV陽性者を支援することを目的に、医療機関に通訳を派遣し、医療機関と連携しながら外国籍の陽性者を地域で支援しています。CHARMは、普通の人の皮膚感覚で必要と感じた支援を行っていますが、市民活動の役割と特徴はそこにあるのではないでしょうか。どんなに小さい取り組みであっても具体的な人が必要としている働きは必ず他にも必要としている人が現れ、小さな取り組みの積み重ねが少しずつ社会の意識も変えていくことにつながっていくと思います。

 日本はこの30年間に文化的背景の異なる人々が社会を構成するようになってきました。その多様性の豊かさを失わずに違いが尊重される社会であるためには、市民活動は今まで以上に重要な役割を担っているのではないでしょうか。

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2009年度 グローバルコミュニティスタディプログラム
in台湾 に参加してきました。

 2008年度のインドから始まったグローバルコミュニティスタディプログラムは、2009年度、台湾の台中YMCAのプログラムでの交流を中心に活動を行いました。国際リーダーから鈴木将樹さん、高岡昌宏さん、中田健朗さん、野外リーダーから河崎翔子さん、石川美緒さん、引率スタッフとして藤尾実さんが参加し、現地のリーダーやスタッフと共に活動してきました。
今号では、参加した3名の方からこのプログラムへの感想と学びについて書いていただきましたので、ご紹介いたします。

グローバルコミュニティスタディプログラム in台湾

アウトドアクラブリーダー 河崎翔子

 今回の、グローバルコミュニティースタディーで強く実感できたことは、YMCAの活動が根本でつながっているということだ。台中YMCA総主事の「YMCAが私たちをつないで、こんなにも素敵な時間を作ったことを忘れないでいて欲しい」という言葉が印象に残っている。今まで全国YMCAリーダー研修会などで他のYMCAの人と話す機会はあったが、YMCAのつながりをそんなに深く考えたことも実感したこともなかった。京都YMCAと台中YMCAのキャンプの内容は全く違うし、それぞれの国の特性が出るのだろうが、キャンプの中でのリーダーの役割や仕組みは共通しているところがあったり全然違ったりする。しかしそれは、京都YMCAと大阪YMCAが違うように各YMCAによって違うものである。その大きな根本となるところで、YMCAは人と人とのつながりを大事にし、キャラクターディベロプメントの下、共通した理念を持っていることが実感できた。

 さまざまな疑問を持っていたが、キャンプで実際に子どもたちと関わっている姿を見たら、私たちとなんの変わりもなかったし、みんなしっかりこのキャンプでの役割を果たし、子どもたちのことを一生懸命に考えていた。キャンプの前に行われるガイダンスやミーティングでも、もちろんリーダーとして、するべきことは何かをスタッフの人から聞くのだろうが、リーダーたちは実際にキャンプで過ごす中で、たくさんのことを学んで身につけて行っているのだと分かった。今まで、リーダートレーニングをたくさん重ねた方がリーダーとして高い意識が持てるものだと思っていた。もちろんそれも間違っていないが、やはり実際に大事なのは実践をしながら学んでいくことだと気付かされた。

 5日間を終えて感じることは、この研修に参加できるきっかけを作ってもらえたことへの感謝だ。旅行や留学では味わうことのできない経験ができたことを本当に幸せに思う。それもこれも、YMCAに参加しているからだし、偶然参加することになった5人と韓国人2人だけど、それぞれの人生に大きな影響を与えたと思う。最初に出会った時より、みんなの表情は格別に違うものになっていた。たった5日間で、こんなにも人を変える経験ができるのはYMCAだからだったのだと思う。

 この研修で出会えたすべての人に感謝します。そして、この経験を私のリーダー活動の中に活かすことを約束します。

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国際リーダー 高岡昌宏

 研修で学んだことは大きく分けて2つある。1つ目は、何事にも真剣に取り組むことだ。一見当たり前のように見えるが、私は日本での活動の中で、自分では気が付かないうちに手を抜いてしまっていたことがある。それは少し恥ずかしいことだから、少し面倒だからなどと無意識のうちに自分に唱え、手を抜いてしまったことであるが、台湾のボランティアリーダーはそうではない。私にとっては小っ恥ずかしい子供たちのためのダンスの練習時も、少しも恥ずかしがらずに真剣に取り組んでいた。またボランティアリーダーだけでクラスを運営している時も、日本ならば友人同士だからと言って気が緩んでしまいそうだが、そんなことはなくきりっとした態度で運営していた。また、1日の終わりにある会議では、たくさんのボランティアリーダーが集まる場だが、私語を慎み静かな雰囲気の中で進められた。役員が前に立ち会議を進めていくのだが、きりっとした態度で話していき、一瞬の気の緩みも無かった。このようにいつも真剣なので、物事が円滑に進んでいく。失敗も少なく失敗があっても反省点が明確で、すぐに直すことができる。

 2つ目は、何事も笑顔で楽しく活動することだ。1つ目に何事にも真剣に取り組んでいるという話を書いたが、真剣だからといって怖い顔をしている訳ではない。台湾のボランティアリーダーは、いつでも笑顔で子供達に接している。私の場合、真剣になると顔が恐くなってしまいがちな上、疲れてそのままの顔で子供達と接し、何度かその点について注意までされてしまっていた。台湾のボランティアリーダーのその笑顔が、努力によってか無意識によってかは分からないが、子供達に安心感を与え活動を円滑に進める潤滑油になっているのは確かなことだ。また、自らが楽しく活動することにより、子供達も本当に楽しく活動でき、嫌にならず続けていくことができる。

グローバルコミュニティスタディプログラム in台湾

 この2つの点を総括すると、真剣に取り組みつつ何事も笑顔で楽しく活動するということだが、これを基礎として活動していくだけでも、物事が円滑に進むことは間違いない。この場合の失敗は大きな経験になり、その後自らを成長させるものとなる。

 研修の拠点になっていた台中YMCAに聖書の箇所が掲げてあった。それは詩編126章5節「流涙撤種的 必歓呼収割」というもので、日本語訳は「涙と共に種を蒔く人は喜びの歌と共に刈り入れる」というものだ。要するに大変な努力もいつか良い結果をもたらすということだが、まさにこのデイキャンプにも言えることだった。初めてすることが多く大変なこともあったが、それが結果として私を大きく成長させることになった。これからもYMCAを通じて成長し続けていきたい。

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体育事業部 藤尾 実(引率責任者)

 京都YMCAグローバルコミュニティースタディーが、2月6日から10日に行われ、ブラザー関係である台湾・台中YMCAに、選抜された野外、国際リーダー5名が派遣されました。今回は特別に韓国大邱YMCAからもユース2名が参加しました。京都YMCAと台中YMCAは1987年ブラザーYMCAの締結を行い、以降、相互にスタッフの訪問、研修受入れなど、交流を行ってきました。

 世界のYMCAでは「グローバルシチズンシップ・アワード(地球市民育成)プログラム」の取組みが始まっています。情報化に伴って世界中の諸問題が我々の身近に感じられるようになり、また、グローバル社会の到来により、数多くの民族・文化・社会が互いに密接に関わりあり、互いに影響を与えながら存在する状況になっています。そのような多文化共生社会に生きるには、世界中のコミュニティに存在する問題やその支援について勉強し、グローバルな視野を持って私たちの日本のコミュニティーワークに生かしていくことが求められています。今回は台中YMCAが取り組むコミュニティーワークを学び、体験し、今後のリーダー活動に生かしてもらうことを目的として行われました。

 京都での事前研修を終え、リーダーたちは、「台湾の文化を知りたい」「日本のことを紹介したい」「日本と台湾の違いを学びたい」「日本と台湾のYMCAの活動、そして思いを共有したい」など、さまざまな、期待と不安を持って台湾に出発しました。

 現地では、市内探索、YMCA訪問を行い、昨年夏にICCPJ(International Camp Counseler Program Japan)で、京都YMCAのキャンプに研修と交流に来た台中YMCAユースリーダーと、今回訪台したアウトドアクラブのリーダーと、半年ぶりの再会を果たすことができ、旧交を温めました。台中YMCAのスタッフ、ユースリーダーが、終始フレンドリーにもてなしていただいたおかげで、早々と我々の不安を取り除いてくれました。また、台中YMCAのスタッフ、ユースリーダーとともに、小学生デイキャンプに参加し、台湾の子どもたちの指導を行いました。デイキャンプは、小学校を借りて、「スポーツコース」「英語コース」に分かれて行われました。初めは、ことば、キャンプのすすめかたなど、さまざまな点で戸惑いがありましたが、活動を分かち合い、共有する中で、多くの学びを得ることができました。中でも、世界の文化交流アクティビティーで、台湾の小学生に向けて文化紹介として日本のじゃんけんを使ったレクリエーションを企画、実施し、好評を得ました。活動後もユースリーダーたちは、毎日、自分のYMCAのこと、キャンプのこと、子どもたちのことを語り合い、友情を育みました。

グローバルコミュニティスタディプログラム in台湾

 参加したユースリーダーの意識が京都、日本だけではなく、世界に広がっていくことを感じます。YMCAを通じて世界の人々とつながっていくこと、違いを認め、良いところを認め合い、友情が育まれていく。このような活動を続けていくことは、きっと世界平和の一歩になるであろうと、強く希望を持つことができた5日間でした。参加したリーダーたちが今回学んだことを、京都で生かしていくことを期待しています。

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【活動報告】

リトリートセンター 簡単デジカメ撮影法

 1月23日(土)、リトリートセンターで季節の自然を楽しむ大人向けのシリーズ講座第2弾「簡単デジカメ撮影法!」を実施しました。講師にプロカメラマンの河辺利晴氏(正会員、洛中ワイズメンズクラブ)を迎え、5名の参加者は、それぞれ持参したデジタルカメラを手に、実際に撮影した写真へのアドバイスを受けたりしながら熱心に受講していました。

 写真は、講義の後に参加者が実際に撮影したスナップ写真です。(クリックすると拡大されます)

参加者が実際に撮影したスナップ写真 参加者が実際に撮影したスナップ写真

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第21回全国車いす駅伝競走大会

 第21回全国車いす駅伝競走大会が、2月21日(日)に国際会議場前をスタートし、西京極競技場をゴールとして行われました。京都YMCAでは、今年もいくつかのワイズメンズクラブに呼びかけ中継所等での介助のボランティアとして参加しました。

 今年は天気もよく、気温も例年になく上昇し絶好の駅伝日和となりました。介助ボランティアは、早朝より宝ヶ池グランドプリンスホテルに集合し、各中継所に向かう選手のバスへの乗車介助から始まります。それから中継所での介助、レースを終えた選手が西京極競技場へ向かうバスへの乗車、競技場に着いてからの降車介助と大活躍。多くのボランティア団体が集まる中でYMCAのマークの入った駅伝ジャンパーを着た約120名のYMCAのボランティアは、特に目立っていました。

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『ぼくはうみがみたくなりました』上映会&活動報告会

 2月27日(土)、自閉症の青年が主人公の映画「ぼくは うみがみたくなりました」の上映会・活動報告会を開催しました。この映画は、実際に自閉症の子をもち脚本家でもあった父親が原作者であり、多くの方に自閉症への正しい理解を広めるために作られました。また、ロードショーされなかったことから、全国の障がい福祉団体などが自主上映会を開く動きが出てきました。その一上映会でこの映画を観た発達障がい児サポートプログラムのリーダーが、「ぜひ、京都でも開きたい!」という想いから実現に至りました。会場は京都教育大学の大講義室を借り、119名の参加がありました。

 上映の前に、京都YMCAと京都教育大学の行っている発達障がい児支援活動の報告会も実施し、ご参加の皆さんに映画の上映と併せて活動の周知を広げることができました。
この会を通じて自閉症や発達障がいについて、当人やご家族が抱える不安への理解が深められ、社会全体でより良き理解と支えが必要であることが少しでも広がれば幸いです。
最後になりましたが、企画から当日の運営に至る様々な場面でご協力いただいた京都ウエストワイズメンズクラブ、京都めいぷるワイズメンズクラブに心より感謝申し上げます。

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